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■ 腸チフスワクチン


【はじめに】
わが国では、腸チフスは毎年47~86例報告されており、症例の約8割が海外での感染です。流行地域へ渡航する際には、予防接種が強く望まれる疾患です。
腸チフスはSalmonella enterica serotype Typhiの感染によって起こる急性発熱性疾患です。感染経路はチフス菌に汚染された飲食物の経口感染がほとんどですが、男性同性愛者による性行為でも感染します。線副期間は1~4週間程度で発熱や倦怠感の症状が徐々に進行し、発症3-4日後までに39℃前後の発熱を呈します。発熱の他に頭痛、健太悪寒、食思低下、下痢などが出現し肝脾腫も認められるようになります。また一過性に体幹部に斑状のバラ診が見られることもあります。重大な合併症としては、発症2~3週後に起こる腸管出血や腸管穿孔があり、生命の危険を伴うことがあります。
世界では年間2100万人ほどが罹り、20万人は命を落とすと報告されています。主に、アジア、中東、東欧、アフリカ、中南米などの地域で旅行者の罹患者が集中しています。
2006年からバングラデッシュ、2007年からインド・ネパールで治療薬が効きにくい腸チフスが流行しています
現在、わが国では承認された腸チフスワクチンは存在せず、輸入ワクチンとしての取り扱いになっております。
腸チフスの分布地図

【接種方法とスケジュール】
接種方法は0.5ccを1回のみ筋肉注射します。腸チフスの流行地域に滞在するものや、チフス菌への暴露が頻繁に起こる可能性がある者は、3年ごとの追加接種が推奨されます。

【有効性】
わが国における臨床研究では、接種前後で4倍以上の有意な抗体上昇を認めた症例は、100例中97例(97%)であった。また、一般的にワクチン接種者の50~80%に予防効果が認められています。

【安全性と副反応】
わが国で行われた191例の腸チフスワクチンの臨床研究において認められた有害事象は、局所の疼痛、全身の筋肉痛、局所の発赤などのいずれも経鼻な症状であり重篤なものは認められなかった。

【渡航に際して接種が勧められる対象】
2歳以上で次のような者に接種が推奨される。
1)腸チフスの流行地域や、衛生状態が好ましくなく汚染された飲食物を接種する可能性が高い地域を渡航する者
2)胃酸分泌が低下あるいは欠如している者
3)家族内にチフス菌の保菌者がいる場合や、チフス菌の保菌者と密接な関係にある者
4)チフス菌の倍湯を頻繁に行うもの

【接種禁忌者】
1)急性疾患にかかっているとき
2)本ワクチンに保存剤として添加されているチメロサールおよびその他のワクチン成分にアレルギーのある人
3)2歳未満
国立感染症研究所感染症情報センターHPより腸チフスについて
http://idsc.nih.go.jp/disease/typhoid/typhoid2010.html