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■ 狂犬病


【はじめに】
狂犬病は人獣共通感染症です。狂犬病ウイルスは、一般的には感染している動物の唾液中に含まれ、その動物に咬まれたり、ひっかかれたり、なめられたりして人体に侵入します。ウイルスは傷口から神経を通じて脊髄・脳へと拡がっていきます。
潜伏期が長いことが特徴で、通常は1~3か月、症例の7~8%は1年以上とされています。臨床症状としては頭痛、発熱、倦怠感、咬傷部位の熱感・掻痒感・知覚異常などの前駆症状が数日見られます。そして脳炎症状が運動過多、興奮、不安狂躁から始まり、錯乱、幻覚攻撃性を呈し、恐水症(水を飲む際の喉頭痙攣)や恐風症(風に敏感となり避けるような仕草をする)といった特徴的な症状が見られます。やがて全身の麻痺が進行して昏睡に至り、呼吸障害により死亡します。発病した場合の死亡率はほぼ100%です。

No risk:リスクなし(ニュージーランドとハワイだけ)
Low risk:低リスク これらの国や地域では(自然の中で仕事をする人、研究者、獣医師、コウモリなどのいるところへの探検家など)コウモリとの接触が考えられる活動をする渡航者は暴露前接種が推奨される
Medium risk:中リスク これらの国や地域では(自然の中で仕事をする人、研究者、獣医師、コウモリや野生動物などのいるところへの探検家など)コウモリや野生動物(特に肉食獣)との背色が考えられる活動をする渡航者は暴露前接種が推奨される
High risk:高リスク これらの国や地域では、ランニング、サイクリング、キャンプ、ハイキングなど長時間郊外で過ごす渡航者は暴露前接種が推奨される。その他にも、獣医師、飼い犬または野生の肉食獣と頻回の接触がある駐在員なども暴露前接種を受けるべきである。子どもは特にイヌやネコと遊ぶ機会があり、成人よりハイリスクです。一般的に子どもはより重度な咬傷を負い、動物によるものであることを隠す傾向があるため、ワクチン接種は重要です


【接種方法とスケジュール】
・国産ワクチン(販売:アステラス製薬 国産ワクチンは生産本数が少ないため入手困難)
接種量1.0cc皮下注、初回接種日を0日とし4週、6~12ヵ月の3回接種(有効年数2年)
・輸入ワクチン(Sanofi Pasteur社 Verorab)
通常接種
接種量0.5cc筋注、初回接種日を0日とし、7日、28日の3回接種(有効年数2年)
3回目の1年後に4回目接種で有効年数5年に
緊急接種
接種量0.5cc筋注、初回接種日を0日とし、7日、21日の3回接種(有効年数2年)
3回目の1年後に4回目接種で有効年数5年に


【安全性・副反応】
・国産ワクチン:全身反応として稀に発熱を認めることがあります。局所反応としては、注射部位の発赤、腫脹、疼痛などを認めることがあります。ゼラチン、鶏卵アレルギーの人に対しては注意が必要です。
・輸入ワクチン:致命的な、または後遺症を残すような副反応を起こす可能性は低いといわれています。ワクチンには微量のウシ由来製品(製造においてBSE未発生国のものを使用)が含まれている可能性があります。しかし、クロイツフェルト・ヤコブ病の発症報告はありません。
・軽度の副反応
注射した局所の痛み・発赤・腫れ・かゆみ(30~74%)
頭痛・悪心・腹痛・筋肉痛(5~40%)
・中等度の副反応
じんま疹・関節痛・発熱(追加接種の約6%)
ギランバレー症候群を症状を呈する状態(非常にまれ)
・重篤な副反応
アナフィラキシーショック(アレルギー反応)

【渡航に際して接種が勧められる対象】
・年齢に関係なく、狂犬病の発生地域などで動物(特に野生動物)との接触のある人。
・獣医師・野生動物保護官・狂犬病ウイルス研究者・取扱者
・狂犬病発生地域への渡航者でそれに罹っているであろう動物との接触の可能性のある人
狂犬病発症後の致死率はほぼ100%であり、流行地域に渡航・滞在する者は年齢に関係なく接種されることが望まれます。


【国産ワクチンの利点】
・国内唯一の流通製品
・国内でのデーターが多い

【輸入ワクチンの利点】
・接種完了までの期間が短い(最低3週間で3回の接種が終了⇔国産ワクチンは6か月)
・抗体上昇が速く、高力価なため、渡航前の接種で早期に免疫獲得
・世界中で数多く利用されている


【渡航後の注意事項】
・飼い犬を含めて動物には咬まれないこと
・咬まれたら直ぐに洗剤でよく洗浄し、できるだけ早く町の病院へ必ず受診してください。
・傷口の処置とワクチン接種を受けてください
・決して、日本に帰ってから治療を受けようと考えないでください。